先日、保険会社に勤める友人に、加入している保険を見直してもらったところ、「今時こんなのに入っている人いない」というダメプランに入っていたらしく、新しくお勧めプランに入ることにしました。私は自分の専門分野や興味分野以外はとんと疎く、結構クチコミに乗りやすいタイプで大失敗することも多々あります。
なので、不確実な栄養・健康情報にまどわされてしまう人の気持ちもよくよく分かります。特にクチコミ、体験談は説得力がありますから、こうしたものを信じたくなる気持ちも分かる。私とて、化粧品などは身近な信頼できる友人が「良い」といったらすぐ買いたくなりますし。
でも、栄養・健康情報に関しては一歩引いて考えることが大切(他のものごとも何でもそうでしょうね。ただ、栄養・健康はある意味命がかかっているので特に)。
「○○を食べたら○○が治った!」
体験談としてはものすごいインパクトですよね。もちろん身体に危険を及ばさないものなら試すのも手。否定はしません。ただし、その話だけで勧めることはできない。これより一歩進むと「最近研究によると」という学術的根拠を用いた情報になります。いわゆるアカデミックマーケッティングという宣伝手法ですが、これは玉石混淆。確かな根拠のあるものと、ぼぼ根拠に値しないものとが混ざっていて、なかなか一般の方には判断が難しいものもあるかと思います。
この判断は、専門家に任せるのが最も良い方法だと思いますが、信頼できる専門家を探すこと自体が難しいんですよね。たとえば、栄養・健康情報の場合は関連国家資格を持っている人が専門家に当たるのですが、考え方、情報収集力、判断などは千差万別。有名、売れているというのも目安にはなりません。
どんな分野もそうかもしれませんね。私も専門外の分野に関しては、信頼できる専門家に巡り会うのが一番難しいと感じるところです。
自分で栄養・健康情報を判断する方法ですが、一番のお勧めは、
疫学者の坪野吉孝先生の著書「食べ物とがん予防 -健康情報をどう読むか/文芸新書」を読むことです。
食べ物とがんにフォーカスを当てた本ですが、健康情報の読み方が非常に分かりやすくまとめられていて、研究経験の無い方でも、研究というものは、どういう方法で行われて根拠とされているのかが分かるようになると思います。
この他坪野先生の著書はどれもみな素晴らしくお勧めです。
私自身は科学情報に関しては「研究によると?」という言葉を鵜呑みにすることはもちろんありません。栄養・健康情報を読む場合、例えばある食品に何かの健康効果がある、というような話の場合、何を根拠にしているか(研究無しの体験談は論外)、根拠となっている研究論文の最低限要約は読んで、研究方法や研究の質、数などから総合的に判断します。
当たり前のことなのですが、この当たり前のことをしている専門家が意外と少ないのも事実で残念なことです。
ここからは専門家向けの話になりますが、かつては研究環境に無いと論文を読むのが難しく、環境差がありましたが、今はアブストラクトであればネットで充分読めるので(最近はフルテキスト読める場合も多いです)、研究環境下に無くてもある程度情報を手に入れることが出来るようになってきています。論文は基本的に英語で書かれているので、これが障壁と感じる方も多いようですが、高校程度の英語でほぼ読めると思うので、是非自分自身で論文を読んで判断して欲しいと思います。書籍になってからの情報では大分タイムラグが生じます。それに他人のバイアスが入らない状態で、自分自身で論文の内容を検討することに意義があります。論文のレビューが出来る専門家がもっと増えれば、日本の栄養・健康情報の質は上がってゆくし、国民の健康状況への改善にも大げさではなく繋がると思うのです。
私は公衆衛生分野出身で、この仕事をしている上での目標は、日本人の健康状態向上に寄与することなので、今日はつい力が入って思わぬ方向に筆が進んでしまいました。本当は、簡単に情報の見分け方を書くつもりだったんですけど。
情報の読み方は坪野先生の著書が本当に素晴らしいので、そちらをご覧下さい。