悪魔的な料理小説、料理人

新宿に出かけたときに寄るのは、
京王百貨店と小田急百貨店の中にある本屋さんです。

どちらも小さめの本屋さんですが、
独自のセレクトで見て歩くのが楽しい本屋さん。
なかなか自分では見つけられない本とも出会えます。

先日小田急百貨店で見つけたのが、
ハリー・クレッシングの料理人。

翻訳小説はあまり読まないので、
自分では選ばない類の本なのですが、
書店員さんの説明書きとともに目立つところに置かれていて、
何となく不穏なムードの表紙に惹かれ手にしました。

舞台はたぶん半世紀以上前のイギリス。
主人公は天才シェフ、コンラッド。

コンラッドは内外の料理に関する文献を読み漁っていて、
料理や食材に関する知識が膨大にあり、技術も素晴らしいシェフ。
その才能や存在、体力や行動力は人間離れしていて悪魔的。

コンラッドの作る料理で、
太りすぎているお嬢様はメキメキと痩せて美女となり、
痩せて顔色の悪い夫婦は、ほどよい肉付きになり
血色も良くなっていきます。

どちらに供される料理も、素晴らしく美味しく、
太ったお嬢様が心ゆくまでデザートまで楽しんでも
するすると痩せていくメニュー。

私も食べる人がみるみる健康になっていくような
メニュー作りを目指しているので、
どんな内容かを考えるのが楽しい。

美味しくていくらでも欲しくなる悪魔的な食べ物といえば、
ナルニア物語のターキッシュ・デライトがすぐ思い浮かびますが、
コンラッド(一応人間)のお料理がいったいどんなものなのか、
詳しい記述はあまりないので、想像が膨らみます。

お嬢様向けのダイエット料理は、
油脂や糖を控えたもので、野菜や出汁でコクを出した
見た目が美しいものかな?

食が細かった痩せぎすの夫婦には、
ハーブなどの香辛料を使って食欲増進を促すお料理かな?

などと想像しつつ、世界観に浸れました。

表紙の不穏なムードは、物語にも終始つきまといます。
ブラックユーモアが効いたお話が好きな方におすすめです。

※お料理の写真はホテルオークラのラ・ベル・エポックのお料理です。